復旧可能スマートウォレットが「他人のために暗号資産の管理をすること」に該当するかを、事前に確認するための照会書の下書き。技術を作る前に、ここを確定させる。
これは提出できる完成品ではなく、たたき台である。実際の提出には、照会者となる事業者の実在、具体的な事業計画、そして弁護士による確認が要る。また提出先・様式の入手方法・添付書類などの手続面は、本稿では確認できていない(調査中に検索の上限に達した)。経済産業省のグレーゾーン解消制度のページで確認すること。
ここで価値があるのは手続きではなく、何を、どの粒度で書けば、当局が判断できる形になるかである。それは先例の構造から読み取れる。
2024 年に、パスキー認証を用いるウォレットについて同じ条文の照会が行われ、非該当の回答が出ている。本稿の設計と論点が重なるため、これを型として使う。
| 照会 | 令和 6 年 9 月 12 日 |
| 回答 | 令和 6 年 10 月 8 日(26 日) |
| 様式 | 様式第十三(第 4 条関係)「新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表」 |
| 照会条文 | 資金決済に関する法律 第 2 条第 15 項第 4 号「他人のために暗号資産の管理をすること」 |
| 結論 | 照会者・BC 事業者とも、単独でも共同でも秘密鍵を取得・生成できないため非該当 |
回答の論理は一貫して「取得しない」「生成できない」の積み重ねである。先例の回答は、照会者が鍵を取得しないこと、片方の ID しか持たないため鍵を生成できないこと、両者が共同しても生成できないこと、を順に確認して結論に至っている。
つまり照会書は、「事業者にできないこと」を、抜け道が残らない形で列挙した文書として書く必要がある。「安全です」ではなく「構造上できません」を書く。
そしてもう一点。回答には必ず「照会書で確認できる事実内容を前提としており、その内容に変更がある場合、又は新たな事実が認められる場合には、判断が変わる可能性がある」と付く。設計を後から変えると回答の効力が及ばない。照会前に設計を凍結する必要がある。
先例は「鍵を分割して持つ/生成できない」型だった。本件はそこに鍵の交換が入る。ここが新しい論点になる。
| 先例(2024) | 本件 | |
|---|---|---|
| 鍵の所在 | 端末内で都度生成、使用後に削除 | スクリプトアドレスにロック、鍵は状態 UTxO が指定 |
| 事業者の役割 | 認証サーバの運営 | guardian の一人+本人確認 |
| 争点 | 鍵を生成できるか | 操作鍵を差し替えられるか |
| 根拠 | グレーゾーン回答で非該当と確認済み | パブコメ回答 No.17/18 の反対解釈のみ。未確立 |
2020 年のパブリックコメント回答は、非該当の条件として「秘密鍵にアクセスする権限を有しておらず」に加えて「当該スマートコントラクトによる暗号資産の移転先を指定し、又は変更し得る権限を有していない」を挙げている。本件はまさにこの二つ目に触れるため、照会の中心はここになる。
本照会を行う事業者(以下「照会者」という。)は、パブリックブロックチェーンである Cardano 上において、利用者の暗号資産をスマートコントラクト(以下「本スクリプト」という。)で保護し、利用者が操作用の秘密鍵を失った場合に当該操作権限を再設定できるウォレット(以下「本ウォレット」という。)に関し、本人確認の提供および復旧の承認者の一人としての参加を行うサービス(以下「本サービス」という。)の提供を検討している。具体的な内容は以下のとおり。
照会者が上記のとおり、複数の承認者のうちの一名として操作資格情報の更新に参加し、単独では当該更新を行うことができない場合において、照会者による本サービスの提供が、資金決済に関する法律第 2 条第 15 項第 4 号に規定する「他人のために暗号資産の管理をすること」に該当するか。
照会者が、公的個人認証サービスを用いた本人確認の結果に基づいて承認を行う場合において、当該承認が上記 1 の判断に影響を及ぼすか。
照会者が、利用者の取引に係る手数料および担保に充てる資産を提供し、かつ当該取引の内容を指定または変更する権限を有しない場合において、当該提供が上記 1 の判断に影響を及ぼすか。
※ 先例は照会事項を一つに絞っている。分けるか一本にまとめるかは、弁護士と相談して決めるべき点にあたる。分けると論点ごとの判断が得られる一方、いずれかで否定的な判断が出る可能性も上がる。
回答には「照会書で確認できる事実内容を前提としており、その内容に変更がある場合…判断が変わる可能性がある」と必ず付く。したがって照会してから設計を変えると、回答の効力が及ばなくなる。下記は、照会前に確定させておく必要がある項目である。
提出先(事業所管大臣を経由するのか、金融庁へ直接か)、様式の入手先、添付書類、費用の有無、非公表とできる範囲。いずれも本稿では確認していない。また本ドラフトは法律文書ではなく、弁護士の確認を経ていない。実際の照会にあたっては、暗号資産規制を扱う法律事務所に依頼するのが前提になる。