要点だけ

いま言えること、
五つ

2026-07-22。調べたことは大量にあるが、判断に要るのはこれだけ。

なくしても、戻せる。
誰にも、見られない。
勝手に、戻されない。

01 / 何の話か

口座と鍵を、別々にする

いまのウォレットは鍵の形から住所が決まるので、鍵を変えると別の家になってしまう。だから一生変えられないし、なくしたら終わる。
そこを、ふつうの家にする。鍵をなくしたら、錠前だけ交換する。住所も中身もそのまま。

02 / なぜ今か

マイナウォレットが出て、こぼれた人がいる

公的IDで本人確認して復旧できるウォレットが、実際に出た。よくできている。
ただし「国に全部見られるのでは」と思って離れた人がいる。その人たちは、いま行き先がない。奪う必要がなく、拾えばいい。

03 / できるのか

できる。もう動いているものがある

Cardano には既に、「Google でログイン」のボタンで開くウォレットが動いている(zkFold)。24語は出てこない。Google が「本人です」と発行した署名を、チェーンが自分で確かめている。手数料 約1.23 ADA という実測値まで出ている。

そして、ここが肝心
zkFold      Google が本人確認 → 署名 → チェーンが検証 → 解錠

我々の案    役所が本人確認    → 署名 → チェーンが検証 → 鍵を交換
                 ↑ 差し替えるのは、ここだけ

しかも Google の署名も公的個人認証の署名も、どちらも同じ方式(RSA 2048)だった。同じ機械が使える。

足りないのは技術ではなく、標準化と資金だった。

03c / ではそのまま真似すればいいのか

しない。Google からは追い出される

zkFold は技術として面白い。ただし復旧の根拠が Google アカウント一点になっている。壊れ方が二つある。

ひとつ、自分が締め出される場合。BAN、乗っ取り、死亡。Google の判断に不服を申し立てても、通るかは向こう次第で、争う手段が実質ない。
ふたつ、Google の都合で壊れる場合。Google は署名鍵を定期的に入れ替える。同種の実装は README で「鍵の入れ替えに追随する仕組みが無く、手動移行が要る」と明記している。利用者が何もしなくても、向こうの都合で経路が切れうる。

後ろに何があるか
Tangem のカード    後ろに何もない       → 全部失えば終わり
zkFold の Google  後ろにアカウントDB   → 追い出されたら終わり
公的個人認証      後ろに人間の登録     → 追い出されようがない

Google が持っているのはアカウントの台帳。消せるし、止められる。
役所が持っているのは人間の登録。カードは失くせても、あなたが日本に住んでいる事実は消せない。だから何度でも再発行できる。

「役所のほうが便利」ではなく、追い出せない根拠に紐づけられるのはこの方式だけ、という構造の話になる。
なお鍵の入れ替え自体は公的個人認証でも起きる(認証局は4年ごとに更新)。ただし証明書は10年有効で、世代が公開されている。運用の重さが桁違いに違う。
そして zkFold 自体もまだ testnet で、本番で使われた実績はない。

03b / 今週起きたこと

全部、この一週間の話

調べていて驚いたのだが、判断材料になった出来事がほぼ 6 日間に集中している

マイナウォレット、アプリを公開
Cardano が RSA 署名を検証できるようになったVan Rossem ハードフォーク。これが無いと上の話は成立しない
zkFold が v2 を公開
Cardano のブリッジから約 10 億円が流出Plutus の署名検証のバグ。我々が書く種類のコードに刺さる
マイナウォレット、一般提供を開始

「なぜ今か」の答えは、これがいちばん短い。部品が揃ったのが今週で、競合が出たのも今週だった。

04 / 危ないところ

技術より、法律が先に効く

guardian が操作鍵を差し替えられる設計は、法的に「暗号資産の管理」にあたる可能性がある。そうなると登録が要る。
もう一つ。guardian に事業者を置くなら、互いに独立していないといけない。子会社に持たせる形は使えない。

05 / 誰に届くのか

本命は、自治体が配るとき

個人はウォレットを乗り換えない。困っていないから。
動くのは配る側が決めたとき。地域通貨や給付金で、「住民の残高が事業者に見えていいのか」が必ず問われる。そこが入り口になる。